かわら版

■ 非上場株式の時価に関する問題 ■

 非上場株式を配当還元価格(原則的な評価方法に比べて低い価格)で少数株主に対して譲渡した取引に関して、所得税法上の低額譲渡にあたるかどうかが争われてきました。
 最高裁判所は、令和 2 年 3 月 24 日の判決において、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻す判決を下しました。判決に至る経緯は以下のようになります。

 平成 29 年 8 月 30 日判決 東京地方裁判所 国側勝訴(配当還元価格を認めず)
 平成 30 年 7 月 19 日判決 東京高等裁判所 納税者側勝訴(配当還元価格を認める)
 令和 2 年 3 月 24 日判決 最高裁判所 国側勝訴(配当還元価格を認めず)

 最高裁では事実認定をするわけではないので、上告(国側の主張)を認容する場合には原判決(高裁判決)を破棄し、差し戻すことにより原審(高裁)で改めて審理することが原則になっています。但し、最高裁判決が破棄の理由とした法律上、事実上の判断は高裁を拘束することになります。

 本件の争点は、所得税に対する課税の場面において、配当還元価格を用いることとなるのは譲渡人である株主が少数株主に該当する場合なのか、譲受人である株主が少数株主に該当する場合なのかということでした。
 一審(地裁)では配当還元価格を用いるのは譲渡人が少数株主である場合とした一方、控訴審(高裁)では譲渡人が少数株主である場合と解釈するためには評価通達の読み替えが必要だとして、通達を文理解釈した場合、譲受人が少数株主である場合と解釈できるとしました。上告審(最高裁)では、原審(高裁)は評価通達を理由として判断しているが所得税法の解釈からすると原審の判決は誤っているとの判断を下しました。

 本件が再審理でどのような結論となるのか現時点では不明ですが、
 ① 通達に従って処理をした納税者が敗訴となったこと
 ② 取引の時価を譲渡者の状況に応じて判定すべきであると解釈したことなど、今回の判決が議論を呼ぶことになるのではないでしょうか?
 また、これほど一般的に影響のある問題をまだ結論付けられないでいる日本の司法制度についても疑問を呈したいと考えます。


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