相続かわら版

「死後離縁」

 「死後離縁したいと思います。」
 「そうですね。それがいいですね。でも手紙も書きましょうね。」

 知人の弁護士からの紹介案件。亡くなったのは46歳の男性(以下A)。鬱病が原因で自死。残された家族は一人。42歳の事実婚の女性(以下B)。事実婚はもう長く、お互いバツイチでしたが子供はなく、結婚することに障害はなかった。
 しかし 10 年前に提出されたのは婚姻届ではなく養子縁組届。「何故?」の問いにBは「Aは両親と仲が悪くて一切の関係を断ちたかったようです。私も会わせてもらったことがなく、相続に関係させたくなかったようです。」と話した。

 子供を望まなかったAは司法試験に挑戦していたこともあり、法律に詳しく、結婚していて子供がない場合に相続人は配偶者と親になることを知っていた。
遺言で全ての財産をBに残すと書いたとしても遺留分は消えない。そこで配偶者の税額軽減のメリットを捨ててでも、両親との相続関係を完全に消滅させるために選んだ手段が養子縁組(養子でも子がいる相続となり、親は相続人にならない)。
Aは「自分が死んだことも両親に連絡するな」と遺書に残していた。相続の手続きを進める中、Aの計画の欠陥をBに話した。
 「Aが死亡しても養子縁組関係は消えない。つまりAの親が死亡した場合、Bさんは代襲相続人になります。相続の手続きを進めるため、いつか戸籍を調べて会いに来られることになります。一切連絡なしでその日を迎えることはとても重いですよね。」

 「死後離縁」とは相続発生後に養子縁組を解消させること。これは裁判所に申し立てて許可を貰わなければなりません。(最近巷で言われている死後離縁はこれではなく、配偶者が亡くなった後その両親との関係を断ち切ることで、姻族関係終了届を出すだけで成立します。)
 申し立ては認められ死後離縁は成立しました。でもその履歴も戸籍に残ります。いつか訪ねて来るかも知れないAの父母。自殺されたことは伝えにくいことでも、例え本人に止められていても、連絡しようと書いた手紙。宛先不明で返ってきましたが、いつか必要になるかもしれないので、大事に保管しておくように伝えました。


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