本年9月29日、「㈱エフオーアイ」(破産手続き中)の粉飾決算によって損害を受けた個人・法人株主が、役員、監査証明を出した公認会計士2人、引受証券会社、東京証券取引所などに損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。上場会社の会計監査に携わっている公認会計士にとっては、厳しい時代になりました。
帝国データバンクによると不適切な会計処理が発覚した上場企業の推移は、下表のとおりです。2009年度の不適切な会計処理の内容で、最も多かったのは「売上・資産等の水増し」ですが、「子会社によるもの」が増加傾向にあります。
発覚年度 | 社数 |
2004年度 | 5 |
2005年度 | 6 |
2006年度 | 19 |
2007年度 | 20 |
2008年度 | 22 |
2009年度 | 16 |
合計 | 88 |
さらに、2010年度になってから不適切な会計処理が発覚した事例を捜してみますと、鉱研工業㈱、愛知時計電機㈱、㈱リンコーコーポレーション、㈱シニアコミュニケーション、㈱エフオーアイ、㈱アクロディア、丸藤シートパイル㈱等があり、その内容の多くは「架空売上の計上」でした。
不適切な会計処理が発覚した場合の会計監査人の責任や負担は、重くなっています。会計監査人が粉飾を発見した場合でも、発見に伴う外部調査委員会の設置の要請、監理銘柄への指定に伴う証券取引所からのヒアリング、訂正有価証券報告書の監査等、金融庁の課徴金処分審理に係る調書レビュー及びヒアリングなどの各局面において大きな負担がありました。さらに、民事再生等に伴う上場廃止の場合は、公認会計士協会の監査業務審査会等や金融庁からの調査が入ることになります。
なお、証券取引等監視委員会が有価証券報告書について訂正を命じるよう金融庁に勧告した事例は、1件のみでした。