相続かわら版

個人版事業承継税制のこれからに期待!

~ 贈与税の初年度適用は0件 ~

 令和元年度税制改正の目玉として創設された個人版事業承継税制(贈与税版)の初年度の適用件数が0件だったようです(週刊税のしるべ 第 3416 号)。個人開業医の承継対策としても期待され、大いに注目された同税制ですが、蓋を開ければ「適用0件」。そこで、同税制が抱える課題を整理してみたいと思います。

○小規模宅地等特例との選択適用(相続税の納税猶予)
 相続税の納税猶予を受ける場合、特定事業用宅地等について小規模宅地等の特例を受けることができません。地価の高い都市部では、小規模宅地等の特例を使った方が有利です。

○「相続対策はシンプルに」というセオリーに反する
 納税猶予を受けると、永続的に、3 年毎に「継続届出書」の提出が求められます。しかし、ご承知の通り、相続税対策はシンプル(=単純で、相続、贈与時のみで完結する)が鉄則。経験上、この「永続的な届出」を嫌ってお客様がNG を出されるケースが多いです。

○将来の法人化を制限する
 後継者が法人成りすると、納税猶予が打ち切られます。つまり、実質的に将来の法人化という道が絶たれる、ということ。納税猶予による一時のメリットよりも、生涯にわたる法人化のメリットの方が大きいので、活用シーンが思い浮かびません。
 また、医業顧客の多い会計事務所の代表として言わせていただくと、法人化の道が絶たれるということは、医療機関の成長を阻害する、ということ。後継者である若いドクターは、地域のたくさんの方々に対して優れた医療を提供したい、という大志に溢れています。医院を拡大してお金を稼ぎたい、という意欲についても同様。そのような方々を多く見て来た身として、この税制をお勧めすることはできません。
 それから、医業顧客の多い会計事務所にとって、医療法人化の支援は大切なサービスの柱のひとつ。事務所経営の観点からも、この税制を活用することは難しいと考えます。

 法人版の事業承継税制も、創設からしばらくは「使えない」と言われ続けてきたので、ぜひ個人版についても大胆な手直しを期待したいところです。


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