最近では相続対策の有⼒な⼿段として「⺠事信託」という⼿法が注⽬を浴びており、マスコミでの紹介だけでなくセミナーや講演会が盛んに開催されています。このように話題となっているのは主に次の2 点の理由によるものと考えられます。
1 : 認知症対策
「⼦供が⾃分(親)の財産を管理するのは、⾃分が死んだときでいい」と考える⽅は、遺⾔を作成し、遺⾔に基づき相続⼈が財産を取得することで充分です。
しかしながら現代では5 ⼈に1 ⼈が認知症となると⾔われており、認知症発症後の財産管理が課題となっています。例えば、不動産の修繕や建替え、⾦融機関の⼊出⾦や資⾦の借⼊等について、本⼈の意思判断が充分でない場合には⼿続きができません。認知症対策として「成年後⾒制度」がありますが、残念ながらこれらの管理には不向きです。更に昨今では後⾒⼈の横領⾏為や後⾒監督⼈報酬の負担等が問題視されているところです。
財産について、後継者等の信頼できる家族が受託者として管理や運⽤を⾏う⺠事信託は、現在の⾼齢化した⽇本の状況にマッチした制度と⾔えます。
2 : 遺⾔の代⽤機能
遺⾔という⼿法によれば、死亡後に誰にどの財産を相続させるかについて指定が可能ですがその指定は次の代までに限られます。
この⺠事信託を使えば、受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨を定めることが可能です。例えば、「⾃分に相続が発⽣した場合には受益権は妻に、妻が死亡した時には⻑男に、⻑男が死亡した場合には孫Aに」と世代を超えて指定することが可能となります。なお、このような指定においては信託契約締結から30 年を経過した時に存する受益者より次に指定された受益者までとされていることに留意が必要です。
⺠事信託という⼿法を理解し必要な場合には利⽤することが、スムースな承継の⼀助になればと思っています。