相続かわら版

自社株の分散相続の失敗例

 相続では相続人に平等にという気持ちから、自社株を相続人に分散して相続させるという事例が散見されますが、ここでは自社株の相続について相続人に平等に相続させた場合の典型的な失敗事例を下記いたします。
 これは本当にあったことなので、くれぐれもこのようなことにならないような相続対策を講じることが望まれます。

 中小企業の A 社の社長であった被相続人甲は A 社の経営に携わっていた子供乙、丙、丁の三兄弟に、甲の所有する A 社株式を乙に 40%、丙、丁にそれぞれ30%相続させるような遺言を作成しており、甲の死後三兄弟は遺言どおりの A社株式を相続しました。甲としては、三兄弟は仲が良く会社も三人で盛り上げていたために三兄弟に A 社株式を相続させても問題が生じることにはならないと考えていたのでしょう。甲の死亡後 A 社では乙が社長、丙は副社長、丁が専務として会社を切り盛りし大きく成長していったのでしたが、やがて会社の経営方針の違いから乙と丙、丁(以下丙等という)とが対立し、その結果丙等は会社を去ることになりました。そこで、丙等は自分達の A 社株式を A 社とは何も関係のない金融系の会社に売却しようとしました。しかし、A 社には株式の譲渡制限が付されているため取締役会に A 社株式を金融系会社に譲渡するための株式譲渡の承認申請をしましたが、A 社がこれを拒否、買受人を乙と指定し、乙と丙等とがその買取り価格について協議した結果、価格が折り合わず裁判となったという事例です。
 この会社は中小企業でありながら収益面でも財政面でも優秀な会社となっており、その収益力や財政状況からかなりの株価が見込まれていました。この裁判の結果、甲は裁判所の指定した株価鑑定人の評価による十数億円で丙等の持つA 社株式を買い取るという判決になりました。その後の会社の業績は以前と変わることなく維持されていますが、株式を購入した乙にとってはその負担はかなり大きいものとなっております。

 被相続人にとって子供に対して平等でありたいという気持ちは十分理解できますが、この事例は、会社の経営に多大な影響を与えるような自社の株式について誰が承継者として適任か的確な判断をして承継者に集中して自社株を相続させることがいかに重要であるかということを示していると言えます。


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