かわら版

■ 金融資産大国の一会計人の思い ■

以下は日経新聞に載った「金融日本」と題された記事です。

<日本は世界でも指折りの金融資産大国である。
家計には1590 兆円、事業会社には845 兆円もの残高がある。
だがこれが生かされていない。
6 月末時点で銀行などに預けられた預貯金1261 兆円のうち、
融資に回っているのは682 兆円と54%に過ぎず、
残りは主に国債で運用されている。
成長分野にもっとお金が回るようにならないか・・・・
銀行は『資金需要がない』というが本当だろうか。>

今までの融資基準を以ってすれば、資金需要が無いというのは現場からの本当の声だと思います。
経営支援機関として幾つかの案件に関係している経験から、融資基準が昔のままでは
お金が上手く回らないのは当然です。

一例として不動産賃貸業を挙げますと、A社は金利も元金も少しずつですが確実に返済しておりますが、
今のままでは耐用年数以内に返済は終わりません。
しかし、修繕費をかければ耐用年数も増えるでしょうし、所有する都心の土地については
殆ど減価することはありません。

それでも新規に融資をするためには、土地を含んだすべての金額が耐用年数以内に
返済されなければならない、という基準が銀行にはあるそうです。
その基準に合致しないため、金融機関はA社の修繕費にあてる融資が出来ません。
長期的にみた賃貸ビルの運営に支障を来す危険性が増してきます。

こうした不動産賃貸業と同じようなことが、ベンチャービジネスでも言えるのではないでしょうか。

2000 年代半ばに銀行が競って中小企業向けにスコアリング融資、つまりパソコンに財務データを
打ち込むだけで自動審査する貸し出し強化策で、不良債権の山を作りました。
打ち込まれた財務データその物が適正意見の付与されるようなものであったかどうかが問題ですが、
仮に適正意見の出せる財務データであったとしても、貸し出す目的も聞かず融資する手法が良くなかったと言えます。

最近事業計画書の作成をお手伝いすることが増えましたが、過去の財務データも必要ですが、
より重要なのは経営者の将来に対する戦略や経営の方向性です。
それをモニタリングしなければ事業のリスクは判断出来ず、
当然融資金額の返済計画の実効性は判断出来ません。

またその後に続く事業計画書と財務データの実績との比較によるモニタリングから浮かび上がる課題への対処を、
その都度経営者自らに気づかせる仕組みを作ってなければ、金融機関のみならず従業員や協力業者、
そしてその家族を含む大勢の人に迷惑をかけてしまうことになります。

会計を通じて事業が上手くまわり、物や債権・債務が上手く流通する手段としての有価証券である
紙幣の流れが良くなって、日本経済が、そして世界経済が良くなっていかなければと強く思っております。


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