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■ 工事進行基準 ■

工事進行基準とは『工事の成果は最終時点で一時に結実するものではなく、
工事の進捗に伴って徐々に結実するものである』という思考に立脚した、
見積りによる収益認識についての基準です。ただし、工事の途中段階では
実物の引き渡し、代金の請求・回収等の、成果が確定していることを示す
取引は存在しません。従って、確実な収益のみを報告すべきであるという
財務報告の原則的思考から、工事進行基準については(1)工事収益総額、
(2)工事原価総額、(3)工事進捗度の信頼性のある見積りの3要件を満足する
場合にのみ適用が可能であると規定されています。なお、工事進捗度の
信頼性のある見積りについては、個別の案件ごとの特殊な事情を考慮する
必要がありますが、一般的には原価総額に対する既支出原価額をもって工事
進捗度を見積る『原価比例法』を採用する企業が多いようです。
原価比例法を採用した場合、工事原価総額の見積りが過少であると、工事
進捗度は本来の見積りよりも過大に見積もられることになります。工事の
収益額は工事収益総額に工事進捗度を乗じて見積られるため、前述の工事
進捗度過大見積りや工事収益総額の過大見積りがあると、売上の過大計上を
引き起こします。また、赤字工事において工事原価総額の過少見積りがあると、
工事損失引当金の過少計上を引き起こすことになります。
会計上の留意点
㈱東芝の不正会計が世間の耳目を集めたことは記憶に新しいところであります
が、一連の事案が露見した発端は、証券取引等監視委員会が2015年2月に㈱東芝
に対し開示検査を実施したことでした。当該検査においては、㈱東芝が工事進行
基準に基づいて収益認識を行っていた案件について、会計処理の前提に問題があっ
たことが指摘されました。
上述の㈱東芝の事例や、震災復興・オリンピックによる人件費・外注費高騰を
受けて、工事進行基準を適用する企業においては、以下の点に留意しているようです。
①工事収益総額の見積り
工事契約金額の変更がある場合には契約書の再締結する等、証憑入手を徹底する。
口頭契約等、契約書が入手できない場合には、当該契約金額は工事収益総額に含めない。
②工事原価総額の見積り
実行予算の定期的な見直しルールを設定し、管理を厳格化する。
③その他
㈱東芝の不正会計を他山の石とし、全社的な管理体制を強化する。
例)
従来は各セクションで工事を管理していた企業において赤字工事等の異常工
事を全社的な管理事項とする(セクショナリズム防止)。
工事進行基準適用工事についての定期的報告ルールを設ける(全社的な情報収集)。


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