かわら版

■ 居住者・非居住者の違い ■

 わが国においては、個人の所得税を支払う義務を負うのは「居住者」です。
 世界的には”180 Days Rule”などというものがあって、正確には国籍が日本であっても、183日以上滞在していた国に対して納税義務を負うことになります。
 例えば、日本とアメリカを行き来するような生活をしている場合、183日以上滞在した国に対して、その人の全世界所得を申告・納税するというのが世界的なルールとなっています。では、色々な国に出入りをして、どの国にも183日を下回る日数の滞在しかしていない場合はどうなるのでしょうか?昨年3月に、これに関する国税不服審判所の採決がなされましたので、ご紹介します。
 この人は仕事上の必要性から、日本を含む複数の国に数日ないし数週間滞在すると別の国に移し、一か国に長期間滞在することはありませんでした。このため日本滞在日数は年間183日を大きく下回り、ほとんどの年で年間の4分の1程度でした。それゆえ、自身の「住所」が日本にあったとは言えず「居住者」に当たらないと主張しました。これに対して国税不服審判所は、各人の住所の認定は、その者の国内外での
① 滞在日数、
② 生活場所及び同所での生活状況、
③ 職業及び業務の内容・従事状況、
④ 生計を一にする配偶者その他の親族の居住地、
⑤ 資産の所在、
⑥ 生活に関わる各種届出状況等の客観的諸事情
を総合的に勘案して行うのが相当としました。認定事実によると、この人の各国別の年間平均滞在日数は日本が102日と最も多く、以下、A国が91日、B国が75日、C国が43日、D国が32日と続きました。また滞在状況を月単位でみると、日本には必ず毎月一度は滞在しているのに対し、他の諸外国には全く滞在実績のない月が存在しました。妻、長女及び次女は日本に居住しており、日本滞在時には日本居宅にて、彼らとともに生活していました。またこの人は病気の治療のため、ほぼ毎月、日本の病院に通院していた他、会社の代表者として、毎月一回、日本で開催される経営会議に出席し経営判断を示すなどしていました。さらに、この人の主な資産は日本国内にある他、会社の日本の金融機関からの借入金に対する連帯保証人にもなっており、居宅には日本の金融機関の抵当権が設定されていました。国税不服審判所は、これらの客観的諸事情を総合的に勘案した結果、諸外国に比べて日本の方が、生活の本拠たる実態をより一層具備していたというべきであるから、住所は日本にあったとし、所得税法2条1項3号に規定する「居住者」に当たると認定しました。
 外国とのビジネスを手がけられている方も多いと思いますので、ご参考になれば幸いです。不明な点は、担当の税理士にご相談ください。


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