労務通信

「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項

 「シフト制(注)」で働く労働者の雇用管理について、会社が現行の労働関係法令等に照らして留意すべき事項について、厚生労働省のホームページにリーフレット等が掲載されました。
 留意事項の趣旨として、現在、人手不足や労働者のニーズの多様化等への対処等を背景として、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的させず、その企業のルールのもとに作成される勤務割や勤務シフトなどにおいて初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような形態が取られているケースが多くみられます。
 柔軟に労働日・労働時間を設定できるという点で会社と労働者にメリットがある一方、会社の都合により、労働日が決定されないまま労働日当日に決定されたり、労働者の希望を超える労働日数が設定されたりすることにより、トラブルが発生することもあります。
 このような状況を踏まえ、会社が留意すべき事項を改めて取りまとめ、公表しています。
 今回は、その中から特に注意が必要な労働契約締結について、ご紹介します。

注)この留意事項での「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。ただし、三交替勤務のような、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間数は決まっていて、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は除きます。

【シフト制労働契約の締結に当たっての留意事項】
◆労働条件の明示
 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項など を書面により(※)明示しなければならないこととされています(労働基準法 第 15 条第1項、労働基準法施行規則第5条第1項第2号等、第3項、第4項 柱書本文)。

※ 労働者の希望に応じて、電子メールの送信等電子的な方法により明示することも可能です(労働基準法施行規則第5条第4項柱書但書各号)。
 シフト制労働契約については、問題となりやすい「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する以下の事項に特に留意する必要があります。

(
)「始業及び終業の時刻」に関する事項
 労働契約の締結時点において、すでに始業及び終業時刻が確定している日については、その日の始業及び終業時刻を明示しなければなりませんので、労働条件通知書等には、単に「シフトによる」と記載するのでは足りず、労働日ごとの始業及び終業時刻を明記するか、原則的な始業及び終業時刻を記載した上で労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等をあわせて労働者に交付するなどの対応が必要です。
 () 「休日」に関する事項
 労働契約の締結時に休日が定まっている場合は、これを明示しなければなりません。また、具体的な曜日等が確定していない場合は、休日の設定にかかる基本的な考え方などを明示しなければなりません。

 労働基準法では、使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1 回又は4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないこととされています(労働基準法第 35 条)ので、最低でもこうした内容を満たすような考え方を明示する必要があります。なお、4週間を通じて4日以上の休日とする場合には、4週間の起算日を就業規則等において明らかにしておくことが必要です(労働基準法施行規則第 12 条の2第2項)。

◆労働契約に定めることが考えられる事項
 () シフト作成・変更の手続
 会社が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、会社と労働者で話し合ってシフトの決定に関するルールを定めておくことが考えられます。

 a.シフトの作成に関するルール
 具体的な労働日、労働時間などをシフトにより定めることとする場合には、シフト作成に関するルールとして、以下の事項について、あらかじめ会社と労働者で話し合って定めておくことが考えられます。 

 ・シフト表などの作成に当たり、事前に労働者の意見を聴取すること
 ・確定したシフト表などを労働者に通知する期限や方法

 b.シフトの変更に関するルール
 基本的に、一旦シフトを確定させた後にシフト上の労働日や労働時間等を変更することは、労働条件の変更に該当します。労働契約法第8条では、「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。」とされていることを踏まえ、確定した労働日、労働時間等の変更は、会社と労働者双方が合意した上で行うようにしてください。

 こうした変更を円滑に行えるよう、シフトの変更に関するルールとして、シフト開始前後において会社又は労働者の都合で労働日、労働時間等の変更を申し出る際の期限や手続きについて、あらかじめ会社と労働者で話し合って、合意しておくことが考えられます。

◆就業規則に規定すべき事項
 常時10 人以上の労働者を使用する使用者は、「始業及び終業の時刻」や「休日」に関する事項などについて、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません(労働基準法第 89 条第1号等)。

 同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻や休日が異なる場合には、勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻等を規定しなければなりません。
 シフト制労働者に関して、就業規則上「個別の労働契約による」、「シフトによる」との記載のみにとどめた場合、就業規則の作成義務を果たしたことになりませんが、基本となる始業及び終業の時刻や休日を定めた上で、「具体的には個別の労働契約で定める」、「具体的にはシフトによる」旨を定めることは差し支えありません。

 詳細につきましては、厚生労働省のホームページをご確認ください。また、使用者のための簡易チェックリストも掲載されていますので、自社が適正な運用ができているかの確認もしてみましょう。

厚生労働省ホームページ
「いわゆるシフト制により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」
こちら


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