医療法人は定款(財団たる医療法人においては寄付行為)により、毎期必ず予算の作成を行ったうえで社員総会(財団においては理事会・評議員会)での承認が必要とされています。
予算を編成するに当たっては、例えば目標収入額を設定し損益計画を立てる方法や、各部門・部署の責任者や担当者が個別に必要と考え提示された予算編成を積み上げて全体予算を作成する方法や目標利益額を設定し全体の予算を逆算する方法等があります。
今回は目標利益を設定し予算を作成する方法について簡単な例を挙げて紹介します。
まずは「目標利益」をいくらにすべきかを把握することが大切になりますが、「目標利益」の算定では、借入金がある場合はその返済資金を、今後の設備投資が予定されていればその購入計画の資金も盛り込んだ上でいくらの設定が必要になるのか検討する事が大切です。
例えば、借入金の返済が年間1,000万円、減価償却費が300万円であるとした場合の必要利益は700万円(1,000万円-300万円=700万円)となります。
さらに法人税等の実効税率を35%と仮定すると、税金を支払う前の必要最低利益は1,077万円(700万円÷(1-0.35)=1,077万円)となります。
借入金の返済を必要とする場合お金は出ていくことになりますが、その返済額の元本部分の支払では経費にはなりません。
また購入した医療機器等の固定資産がある場合は耐用年数に応じて減価償却費として費用化されますが、この減価償却費ではお金は出ていきませんが経費にはなります。
つまり、お金が出ていくが経費にならないものやお金は出ていかないが経費になるものがあるため、必ずしも利益=余剰資金というわけではありません。
また、利益に対して法人税等の税負担が発生するため、税負担額も踏まえて必要な利益を算定する必要があります。
このようにして、必要な利益を算定し、その利益を生み出すためには、どのくらいの医業収入が必要であるのか検討していきます。
そして、編成した予算がつくりっぱなしで形骸化したものとならないように、当該予算を基に実績と比較し差異がどのような原因で生じたのか分析し、必要に応じて計画修正をしていくことが大切です。