労務通信

厚生労働省「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」がとりまとめた「論点の整理」を公表

 現行の労働基準法における賃金等請求権の消滅時効の期間は、賃金(退職手当を除く)、災害補償、その他の請求権は2年間行使しないときは消滅するとされています。
 一方、民法については、第193 回国会において改正民法が成立し、消滅時効関連規定についても大幅な改正が行われました。具体的な改正内容としては、労働基準法第115 条が設けられる際にその根拠となった使用人の給与等に関する短期消滅時効の規定が廃止されるとともに、一般債権に係る消滅時効については、①債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、又は②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10 年間行使しないときに時効によって消滅する、と整理されました。
 これに伴い、労働基準法第115 条等の在り方について専門家による多面的な検証を行うため、厚生労働省に「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」が設置され、2019年7月に論点の整理が公表されました。

論点整理のポイント
■賃金等請求権の消滅時効の起算点、消滅時効期間について

・消滅時効期間を延長することにより、企業の適正な労務管理が促進される可能性等を踏まえると、将来にわたり消滅時効期間を2年のまま維持する合理性は乏しく、労働者の権利を拡充する方向で一定の見直しが必要ではないかと考えられる。具体的な消滅時効期間については引き続き検討が必要。

■年次有給休暇、災害補償請求権の消滅時効期間について
・年次有給休暇の繰越期間を長くした場合、年次有給休暇の取得率の向上という政策の方向性に逆行するおそれがあることから、必ずしも賃金請求権と同様の取扱いを行う必要性がないとの考え方でおおむね意見が一致。
・仮に災害補償請求権の消滅時効期間を見直す場合、労災保険や他の社会保険制度の消滅時効期間をどう考えるかが課題。

■記録の保存期間について
・公訴時効(※)との関係や使用者の負担等を踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効期間のあり方と合わせて検討することが適当。
※労働基準法違反である場合、公訴時効は原則3年。

■見直しの時期、施行期日等
・民法改正の施行期日(2020年4月1日)も念頭に置きつつ、働き方改革法の施行(※)に伴う企業の労務管理の負担の増大も踏まえ、見直し時期や施行期日について速やかに労働政策審議会で検討すべき。
※2020年4月は中小企業の労働時間の上限規制、大企業の同一労働同一賃金の施行

 厚生労働省ホームページ
 【「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」がとりまとめた「論点の整理」を公表します】
こちら


労務通信