医療福祉経営通信

福利厚生~従業員へ社宅・寮を貸与したときの税金・社会保険料について~

看護師等の使用人に対して社宅や寮を貸与する際に、低額あるいは無償で貸与した場合、家賃相当部分が
原則給与と取り扱われるため、源泉所得税や社会保険料の対象となります。
ただし、使用人から「一定額の家賃」を受け取っている場合には課税等の負担は生じません。この「一定額の
家賃」の算定に関して、源泉所得税と社会保険では次のように取り扱われています。

【源泉所得税の場合】
「一定額の家賃」は次の①~③の合計額とされています。
① (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
② 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
③ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
使用人に無償で貸与している場合は①~③の合計額が給与として課税対象となり、合計額より低い家賃を
受け取っている場合は、その受けた家賃と合計額との差額が給与として課税されます。
ただし、受け取っている家賃が①~③の合計額の50%以上であれば、実際に受け取っている家賃との差額は
給与として課税されません。

例えば、上記①~③の合計額が、20,000円と計算される社宅を使用人に貸与した場合、
ア)使用人に無償で貸与すると20,000円が
イ)使用人から5,000円の家賃を受け取る場合はこの20,000円との差額の15,000円が
給与として課税されます。
また、使用人から12,000円の家賃を受ける場合は20,000円の50%以上を家賃として受け取っているので
20,000円との差額8,000円は給与として課税されません。通常の勤務時間外においても勤務を必要とする
ような場合など一定の要件に該当する場合には無償で貸与しても給与として課税されない場合があります。
なお、医療法人や事業主である先生等が社宅等を所有している場合の他、他者から借りて貸与する場合でも
前述の①~③の合計額が「一定の家賃」となります。よって貸主等から固定資産税の課税標準額の確認が可能
であるかどうかが重要です。
ただし、現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担は社宅の貸与とは認められ
ないので給与として課税されます。加えて役員等への無償あるいは低額による貸与については別途評価方法が
定められている為注意が必要です。
 
【社会保険の考え方】
社会保険料を算定する場合の標準報酬月額を決める際に、その対象とされる報酬は賃金、給料、俸給、手当、
賞与、その他名称の如何を問わず被保険者が労務の対償として受けるものすべてが含まれます。
ただし大入り袋や見舞金のような臨時に受けるもの、年3回以下の賞与は含まれません。

この対象となる報酬の中には、住宅(社宅・寮など)を現物で支給する場合も含まれます。
住宅が現物で支給された場合「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(以下、平成21年3月31日厚生労働省
告示第231号を参照)において『住宅で支払われる報酬等』の額が県ごとに定められています。
例えば福岡県では1人1ヶ月当たりの住宅の利益の額として畳1畳につき1,100円で金銭に換算するものと
定められています。
使用人に無償で住宅を貸与する場合には、上記で換算された額が報酬に該当します。
使用人から換算された額より低い家賃を受け取っている場合には、受け取っている家賃と換算額との差額が
報酬に該当します。
また、使用人から受け取っている家賃が換算された額を超えている場合は報酬に該当しません。

具体例)
10畳の社宅を使用人に貸与した場合、使用人に無償で貸与する11,000円(@1,100円×10)が報酬と
なり、5,000円の家賃を受け取ると、11,000円と5,000円の差額の6,000円が報酬に該当します。
使用人から12,000円の家賃を受ける場合は11,000円を超えるため、報酬に該当する部分は発生しません。

篠原公認会計士事務所グループ 医療経営かわら版推進室


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