医療福祉経営通信

[Q&A] 病医院の消費税について

Q1. 病医院において消費税の申告・納税義務が生じる場合について教えてください。

 A 2年前の課税売上高が1,000万を超えると、消費税の申告・納税義務が生じます。
課税売上高は健康診断(健康診断書作成料を含む)・人間ドック・室料差額・各種文書料などが対象と
なります。加えて、これらの自費収入以外にも、事業用車両の売却収入など資産の貸付や譲渡も課税
売上に該当し、合算して1,000万円を超えるかどうかの判定を行います。
当年分の課税売上高が1,000万円に満たなくても基準期間である2年前の課税売上高が1,000万円を
超えていれば当年度は課税事業者に該当し、申告・納税義務が発生します。
その場合、基準期間の課税売上高が1,000万円超5,000万円以下の場合には、本則課税方式ではなく、
簡易課税方式の採用も可能です。簡易課税方式では課税売上高を5種の事業(卸・小売・製造・その他
事業およびサービス業)に区分し、それぞれの「みなし仕入率」を乗じて消費税を計算します。

病医院では、非課税仕入れとされている”人件費”が主要な経費であることが多いため、簡易課税方式を
採用する方が有利となる場合が多いと考えられます。
ただし、高額な医療用機器の購入や大規模な修繕などの設備投資に多額の出費を要する場合には本則
課税で計算する方が有利なケースもあります。
なお、簡易課税方式を採用すると2年間は変更できないため、投資計画及びその後の事業計画に照らし
合わせて事前によく検討する必要があります。

病医院の消費税.JPG

Q2. 課税の対象となる収入は具体的にどのようなものがありますか。

 A 病医院において課税の対象となる主な収入には次のようなものがあります。
  ① 予防接種
  ② 人間ドック
  ③ 健康診断(健康診断書作成料を含む)
  ④ 人工妊娠中絶(健康保険適用外のもの)
  ⑤ 意見書作成料
  ⑥ 往診・訪問診療等の交通費
  ⑦ 診療時間以外の診察の自己負担額
  ⑧ 医師の処方箋に基づかない医薬品または医療用具などの販売
  ⑨ 患者が自己負担する高度先進医療(保険外併用療養費)の徴収差額部分
  ⑩ 美容整形・歯科自由診療
  ⑪ 保険証を提示しなかった場合の自由診療収入
  ⑫ 病医院内売店の販売収入
  ⑬ 自動販売機や公衆電話の手数料収入
  ⑭ 一定の駐車場の貸付け
  ⑮ 償却資産(建物、医療用機器、車両等)の売却

Q3. 個人診療所から医療法人へ組織変更した場合の消費税の納税義務について教えてください。

 A 課税事業者選択届出書の提出がない限り、医療法人の設立事業年度における消費税の納税義務は
発生しません。

個人診療所から医療法人へ組織変更した場合には、医療法人設立時にはその事業年度の基準期間があり
ません。基準期間が無く、その事業年度開始日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上で
ある法人は申告・納税義務が生じますが、持分の定めのない社団医療法人は、出資の金額を有しないと
されているため申告・納税義務は発生しません。

篠原公認会計士事務所グループ 医療経営かわら版推進室


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