今年4月から月60時間超の残業に対する割増賃金率について、中小企業の猶予措置が終了し、50%の割増率が適用されることとなりましたが、この割増率の変更に対する社会保険の随時改定について、日本年金機構から通達(通達番号20230206-4)がありましたのでご紹介します。
◆照会内容
「今年の4月から中小企業の月60時間を超える残業割増賃金率が50%に改正となるが、就業規則等による割合変更ではなく法改正による変更であるが、随時改定の契機となるのか」との問い合わせがあった。
◆回答情報(一部抜粋)
・支給単価(支給割合)が変更となった場合は随時改定の対象となる。今回の件は、月60時間を超える残業手当の割増賃金率を50%に変更する予定であり、支給単価(支給割合)の変更として取り扱う。
・法改正により割増賃金率が変更となった残業手当(月60時間を超える残業手当)については、支払の有無に係わらず、法改正による割増賃金率の適用された残業手当の支給開始月が起算月となるが、以後3ヶ月間のいずれの月においても、割増賃金率が変更となった残業手当(月60時間を超える残業手当)の支給実績が生じていない場合は、報酬の変更とみなすことができないため、随時改定の対象とはならないこととなる。また、その後、割増賃金率が変更となった残業手当(月60時間を超える残業手当)の支給実績が生じた場合であっても、その月を起算月とすることにはならない。
◆上の回答情報を元に実際の例を挙げると
・末締め 翌月20日支払いの場合
5/20支給分給与(4/1~4/30分の残業手当支給)→ 5月が随時改定の起算月
5月~7月の支給分給与のどこかで月60時間を超える残業手当の支給があれば、8月随時改定の固定給変動の条件は満たすこととなる。
→ 5月~7月の平均報酬月額を元に、現等級から2等級以上上がる場合は8月随時改定の対象となる。
逆に、5月~7月の支給分給与で月60時間を超える残業手当の支給がなければ、8月以降に月60時間を超える残業手当の支給があったとしても今回の法改正に関する随時改定の対象とはならない。
月60時間を超える残業が発生している企業では、どの月が起算月となり、いつ随時改定の確認を行う必要があるかを確認し、手続きの漏れがないようご注意ください。