社会福祉法等の一部を改正する法律(平成 28 年法律第 21 号)が公布され、社会福祉法人制度が大きく改革されることとなりました。
厚生労働省が示す今回の改正の趣旨には、「福祉サービスの供給体制の整備及び充実を図るため、社会福祉法人の経営組織の見直し、事業運営の透明性の向上及び財務規律の強化、介護人材の確保を推進するための取組の拡充、社会福祉施設職員等退職手当共済制度の見直し等の措置を講ずること。」とあります。
法人制度改革の観点から以下の対応が求められるものと思われます。
(1)経営組織のガバナンスの強化
(2)事業運営の透明性の向上
(3)財務規律の強化
(4)地域における公益的な取組を実施する責務
(5)行政の関与の在り方
この観点の内、今回は経営組織のガバナンスの強化について紹介します。
経営組織のガバナンス強化のポイントは、理事、理事会、評議員、評議員会等の各機関における牽制機能の発揮、または財務会計に係るチェック体制の整備と考えます。
各機関に対する牽制機能の発揮のための方策として、従来は任意設置の諮問機関に過ぎなかった評議員会を必置の議決機関とし、理事および理事会を監督する機関として並びに重要事項の決議を行う期間として位置付けられました。
また、理事会の業務執行に関する意思決定機関として位置付けや、従来は不明確であった理事の義務及び責任並びに監事の権限、義務及び責任を法律上規定し明確にされました。
次に、財務会計に係るチェック体制の整備のための方策としては、従来は外部監査が任意とされていたところ、一定規模以上の法人は会計監査人(公認会計士又は監査法人)による監査が義務付けられることとなりました。
会計監査人は外部の独立した第三者として、社会福祉法人が作成した計算書類等を監査します。 そのため、財務情報に対する信頼性が向上することに繋がります。
また、監査の過程で内部管理体制の確認が行われることでガバナンスの強化にもつながるものと考えられます。
なお、会計監査人監査が必要となる法人の規模は、今後、政令で定めることとなっています。
今回の法改正は社会福祉法人の組織体制の根幹に影響を及ぼすため、全ての社会福祉法人において定款の変更が必要とされています。 定款例はこれから示される予定です。