厚生労働省はテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドラインを改定、公表しましたので、改定の主なポイントについてご紹介します。
◆テレワークの導入に関する留意点
〇テレワークの対象者等
・対象者について、正規雇用労働者、非正規雇用労働者といった雇用形態の違いのみを理由としてテレワーク対象者から 除外することのないよう留意が必要。
〇導入に当たっての望ましい取組
・導入に当たっての望ましい取組として、書類のペーパーレス化等が有効。
◆労務管理上の留意点
〇テレワークにおける人事評価制度
・上司は、部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておくとともに、評価対象期間中には、必要に応じてその達成状況について労使共通の認識を持つための機会を柔軟に設けることが望ましい。
・時間外、休日又は所定外深夜(以下「時間外等」という。)のメール等に対応しなかったことを理由として不利益な人事評価を行うことは適切な人事評価とはいえない。
・テレワークを実施せずにオフィスで勤務していることを理由として、オフィスに出勤している労働者を高く評価すること等も、労働者がテレワークを行おうとすることの妨げになるものであり、適切な人事評価とはいえない。
〇テレワークにおける費用負担の取扱い
・テレワークを行うことによって労働者に過度の負担が生じることは望ましくない。 ・労使のどちらがどのように負担するか、使用者が負担する場合における限度額、労働者が使用者に費用を請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、企業ごとの状況に応じたルールを定め、就業規則等において規定しておくことが望ましい。
〇人材育成
・テレワークの特性を踏まえると、自律的に業務を遂行できることがテレワークの効果的な実施に適しており、企業は、各労働者が自律的に業務を遂行できるよう仕事の進め方の工夫や社内教育等によって人材の育成に取り組むことが望ましい。
・併せて、管理者による適切なマネジメントが行われることが重要であり、テレワークを実施する際にも適切な業務指示ができるようにする等、管理職のマネジメント能力向上に取り組むことも望ましい。
◆様々な労働時間制度の活用
〇労働時間の柔軟な取扱い
・通常の労働時間制度及び変形労働時間制
あらかじめ就業規則に定めておくことによって、テレワークを行う際に労働者が始業及び終業の時刻を変更することができるようにすることが可能である。
・フレックスタイム制
労働者にとって仕事と生活の調和を図ることが可能となるといったメリットがあるものであり、フレックスタイム制を活用することによって、労働者の仕事と生活の調和に最大限資することが可能となる。
・事業場外みなし労働時間制(※注)
テレワークにおいて一定程度自由な働き方をする労働者にとって、柔軟にテレワークを行うことが可能となる。
(参考)
事業場外みなし労働時間制は、労働者が事業場外で業務に従事した場合において、使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難な場合に、原則、所定(通常の、場合によっては特定の)時間労働したとみなすことのできる制度です。
(注)テレワークにおいて、次の①②をいずれも満たす場合には、事業場外みなし労働時間制度を適用することができる。
①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
以下のいずれかに当たる場合、①を満たすと認められる。
・勤務時間中に、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することができる場合
・勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合
・会社支給の携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、又は折り返しのタイミングについて労働者において判断できる場合
②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
以下の場合、②を満たすと認められる。
・使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、1日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものではない場合
◆テレワークにおける労働時間管理の工夫
〇客観的な記録による把握
・使用者が労働時間を把握する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認すること等が挙げられている。
〇労働者の自己申告による把握
・労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことや、実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと。また、自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない。
〇テレワークに特有の事象の取扱い
・時間外、休日、所定深夜労働についての手続きとして、労使の合意により、時間外等の労働が可能な時間帯や時間数をあらかじめ使用者が設定することも有効。また、労使双方において、テレワークの趣旨を十分に共有するとともに、時間外等の労働を行う場合の手続等を就業規則等に明記しておくことや、テレワークを行う労働者に対して、書面等により明示しておくことが有効。
◆テレワークにおける安全衛生の確保
〇自宅等でテレワークを行う際のメンタルヘルスケア対策の留意点
・テレワークでは、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多いことから、「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト(事業者用)」を活用する等により、健康相談体制の整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましい。
テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト【事業者用】
こちら(厚労省よりエクセルファイルをダウンロードします)
自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】
こちら(厚労省よりエクセルファイルをダウンロードします)
今回は改正内容の主なポイントについて触れましたが、テレワークを導入・実施される際には、以下の厚生労働省ホームページにガイドラインのリーフレットが掲載されていますので参考にされてください。
厚生労働省ホームページ 「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」
こちら