かわら版

海外子会社からの資金還流

製造業の生産拠点の海外へのシフトが進み、海外生産比率も、海外子会社等の収益力も、拡大傾向にある。生産も販売もグローバルな展開を進める中で現地法人
の稼得する収益(利益)を日本の親会社に資金還流する方がよいか、当該進出国や更に第三国への再投資資金として現地に留保する方がよいか、資金を外貨のま
ま保有するか等思案をしているようである。

数ヶ月前に、このような話をされ、「解というものはなく、結局、大きな意味でカントリー・リスクをどう考えるかでしょ」と応じたことがある。

製造業の海外への当初の進出は、日本からの直接投融資による現地法人の設立、現地生産拠点の確保である。直接投資に伴う、配当、貸付金利子のリ
ターン及び生産技術等の移転に伴う使用料のリターンによる資金還流は貸付金の返済等が進むと、次第に配当のみとなり、また、生産品の外‐外取引化に伴い、
海外進出に伴う果実を日本に還流することは減少して行く。

経済産業省の国際租税小委員会の中間論点整理(平成20年8月)によると、わが国企業の海外生産比率は3割に達するとともに、海外子会社の利
益は2001年と比較して、4倍超にまで大幅に増加している。これらの海外利益の多くを国内に資金還流させずに海外に留保する傾向が見られ、近年は年
2~3兆円、2006年度末には、約17兆円強の利益が内部留保されている。

海外子会社の利益を配当等として資金還流すると、外国税額控除による二重課税の排除等による軽減はあるが基本的には、わが国の法人税率が適用される。

経済産業省は、海外蓄積利益の資金還流の促進を考え、海外子会社から国内親会社への配当についての益金不算入制度の創設を平成21年度税制改正の要望事項とする方向である。

この制度が導入される場合には、現在の外国税額控除制度が大幅に見直され、海外子会社からの配当は、日本の相対的に高い法人税の課税対象外となり、状況によっては複雑な事務手続が軽減される可能性もあるので、わが国への資金還流の促進に資する側面はあると言えよう。(なお、法人税率の引下げにつ
いては、従来より要望されているものである。)

\しかしながら、実際に海外子会社からわが国に資金還流が進むか否かは、より広い経営判断の中で行われるものである。

グローバルな事業展開を行うに際し、販売・生産・研究・統括拠点としての適地への投資をどのように行うか、そのために、資金調達・保有・運用そして移動を安定かつ効率的に、適時に行うには、どうすればよいか等多岐に亘る要因を判断して行われる。

成長する市場、適切なコストで品質の良い製品を提供できる拠点、技術的優位性を保ち研究開発に適する地域、金融、為替管理制度が安定的かつ一定の自由度を保つこと、透明度が高く、企業活動に阻害要因とならない税制等が考慮されるであろう。

人口が減少しつつあるわが国が中長期的に販売市場としての成長を見込むことは難しく、グローバル化する企業活動に対して、日本が選択される国として今後、優位性を保つためにどのようにしたら良いのかが問われている。

このような話は、平時の話であり、所与と思われていたことが大きく変わるときには、最も優先すべきものは何であろうか。


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